2012年の総括

過去の年末総括を改めて見直してみると、2006年・2007年は「しんどい年」、留学した2008年は「友達百人できるかなの年」、2009年は「行動力の年」、2010年は「今年こそ本当にしんどい年」、2011年は「淡々と仕事したら終わった年」と書いてあり、そして2012年の目標は「健康をたもつ」であった。蓋を開けたらこうなった。

  • アメリカ出張(フロリダ、ハワイ乗り換え)(1月)  History of Mathematical Logicの研究会に出るためにアメリカ出張。行きしなにミネソタミネアポリスに寄って2泊し、友達とご飯したりお茶したりして、そのあとフロリダ州ディアフィールドビーチへ。大西洋は青かった。Martin Davisと握手した。帰りは2004年以来にハワイに降り立って、ホノルルで一晩すごした。暖かかった。
  • 引っ越し(2月)  留学帰国以来、2年ちょっと住んだ部屋(築30年以上北向き1階角部屋)を引き払って、市中心部のマンションに引っ越した。家賃はそれほど上がらないのに、とっても暖かくなった。前の部屋は本当に寒かったので…。モノをあまり持たない暮らしにしよう、と心に決めた。
  • タイ旅行(2月)  タイに旅行に行った。タイランド湾で生まれて初めてダイビングした。お魚が綺麗だった。アユタヤにも行き、バンコクで留学時代の友人Nさんに会った。色々と思うところのある印象深い旅ではあった。
  • 五十周年の舞台(3月)  お稽古サークルの創立五十周年の舞台があった。私は記念誌の編集を終え、舞台は裏方+いくつか出演。
  • 就職(4月)  恐らく誰も予想しなかったタイミングと経緯で、今の職場に就職した。授業、会議、学生対応、何をとっても初めてのことばかりで、周りの先生方に沢山助けて頂いた。職場にはたいへん恵まれた。あの苦界からすくいあげて頂いたご恩をしっかりと返さねばならぬ、とご奉公を誓う。
  • 椎間板ヘルニア(4月)  忘れもしない4月17日から本当に腰が痛くて、調べたら結局第4・第5腰椎間の椎間板ヘルニアだった。なお現時点で腰はまだ痛くて、リハビリも続いており、医師には痛みが引くまでまだまだかかると言われている。おそらく1年ちょっとは痛いのだろうな。ヘルニアのせいで、長距離移動が事実上不可能になる。
  • 海外から友人きたる(4月・5月・6月)  4月にはエストニアからHeleri, 5月にはアメリカからYi, 6月にはノルウェーからNatalieが来た。HeleriとNathalieはフルブライトの同期で、Yiはミネソタでの友達だ。世界の観光地・京都に住んでる役得と言えるかもしれない。連絡をとって会いに来てくれる友情に感謝。
  • 資料調査(5月)  腰痛をおして唯一強行した調査。某外資系コンピュータメーカーの、某超有名ノートパソコンの開発史について、インタビューをする機会を得て、しかも当時の資料まで預かった。この方はお稽古サークルの大先輩で、このような調査が可能になったのも私がこの10年、同窓会役員を続けていたからに他ならない。何でもやっておくものである。
  • 英語論文・翻訳解説企画(通年)  英語論文は6月に出した後、11月にレフェリーから返ってきて12月に再投稿。後者の企画は昨年からエンドレスかつ限界のないレベルで作業が続いている。この2つの仕事の御蔭で、自分の研究者としてのレベルが色々上がったのは間違いない。ただ、しんどい。
  • 博士論文(通年)  とりあえず7月に中間発表、10月に面談、12月に紙束を出したが、これからまだ改稿。

端的に言って、4月以降、仕事しかしていない。土日も休まなかったし休暇もとらなかった。去年の総括で書いた「『本を共著で一冊出さねばならない』『博士論文を出さねばならない』『新しいお仕事を始めねばならない』という、エベレスト級のお仕事三つ」は、ほぼやった。色々思うところはある。仕事に逃げすぎたとか、精神が象牙の塔にこもりすぎて世間の人が何を考えているのかわからなくなってしまったとか、「健康をたもつ」を達成できたかどうかは(ヘルニア的な意味で)極めて怪しいとか、多分色んなものを犠牲にしたけど何を犠牲にしたかも最早よくわからないとか。

とにかく、あらゆる意味でスペックが足りないのが(そしてそれをあげつらわれるのが)嫌で、ただただそれを脱するためだけに乗り越えた一年だったかもしれない。各方面からプレッシャーをかけられまくって、しかもヘルニアのせいで移動ができず、4月以降は海外はおろか京都大阪エリア以外に出ることすらできなかった。2010年に覚悟したヒマラヤ山脈無酸素縦走、死して屍拾うものなしの境地が極まっていたようにも思う。経済的に余裕があるだけマシだったが、今年もちょっとやりすぎだった。働き方を考えねばならない。こんな生活をしていたら30代で人生終わる(そんでもって周囲はそれを煽ることはあっても基本的に止めないこともこの一年でよく分かった)。たぶん根本的な問題というのは、私が仕事に逃げているということについて、私が何から「逃げて」いるのかということだ。今年は全力で逃げたので、「逃げ」自体には成功したけれど、これは持続可能でない。おいおい「逃げ」そのものにも向き合わざるを得ないだろう。

もうちょっとポジティブなことを書けば、就職にともなって、留学した2008年に次いで出会いの多い年だった。職場の同僚の先生方、私のゼミの一期生たち、全てが新しい人間関係で、圧倒的だった。とはいえ周囲は10歳以上年上か、10歳以上年下で、自分の立場というものに困惑する一年でもあった。あと特筆すべきは、就職の御蔭で経済的に大変楽になったこと。昨年度までの赤貧生活との落差が激しすぎて、頂いている給料を正直言ってもてあましている。もうちょっと考える余裕が出たら、社会的企業(できれば中東関係がよい)に投資でもしたい。あと、今年やった「人生でまだやったこと無いこと」へのチャレンジは、(教授会で発言するとかはおいといて)ダイビングする、ネイルサロンに行く、ネットカフェに行く、など。来年はもっと色々試してみたい。様々な人との出会いで増えた選択肢というのが色々ある。

来年は、出版と博士論文の仕上げが残っていて、そして新しいプロジェクトをいくつか始めねばならないわけだが、とりあえず今年これだけやったので「仕事してないくせに」とか言える人はきっといないだろうし、というわけで、腰を治す以外の来年の目標は「遊ぶ・休む」にしたい。既に国内出張が色々入っていて、ゼミ旅行とかも考えないといけないし、来年度の授業は週7コマ(以上)だし、色々お役目も回ってくる予定という状態なわけだけど、思えばもう何年もろくに遊んでもいないし休んでもいないので、ここらで全体のバランスを図ろうとしてもばちはあたるまい。皆さま来年もよろしくお願いいたします。