曇りときどき小雨

とにかく目先のことからやるしかない。もっとも目先のこととは、金曜の授業である。しかもこれまであまり教えたことのないことである。というわけで、さっさと起きて昼過ぎまでみっちりと授業の準備をした。学生に興味を持ってもらえるといいのだが。

今日は平日ではあるのだが、ミネソタ大学での友達で法哲学を専門としている中国人留学生Yiが遠路はるばる京都まで来てくれたので、昼下がりから会いに行った。Yiは全然変わりなく、"Minnesota Law"なんて大学Tシャツまで着て、たいへん元気な様子だった。とりあえず金閣寺に行くことにしてバスに乗った。道中色々と話した。広大にいるという彼女のこととか、私の仕事のこととか。金閣寺から竜安寺を回って(じつは竜安寺に行ったの初めて!)、石庭やら枯山水やら茶室やらについて解説し、嵐電に乗って大宮に出て、ずーっと歩いて錦を抜けて、先斗町でお寿司を御馳走した。鱧のてんぷらと、賀茂茄子田楽に始まり、色々握りを食べて、とろの細巻でしめた。Yiはこんなに生魚食べたの初めてだと言っていた。さもあらん。これを知ったからにはアメリカにあるsushiなどというのはまがい物だということがわかるであろう、と重々しく告げておいた。ま、sushiにはsushiの良さもあるんだけど(鮮度を除けば)。

Yiはお土産に、ミネソタ産の白ワインをくれた。持ってくるの重いのに~! 何でもミネソタ大学が生産に関わっているのらしい。いわく「ミネソタが懐かしいだろうと思って、ミネソタの香りのするものにした」のだそうだ。Yiとは留学開始直後に院生向けWriting講座で出会った。ElitaやHernánも同じ講座で出会った友達である。留学直後の不安な時期に友達になったこともあって、ミネソタでもとても気やすい友人のひとりだった。今日も勿論会話はずーっと英語だったわけだが、ものすごく気安く喋れて、本当に楽だった。日本人じゃないから楽というのもあるかも。色んなものから解放されて気楽に過ごしていた留学時代の空気が、まるでいっとき京都に吹き込んできたみたいだった。ふだん誰を相手にしていても、どれほど気を張ってたかを思い知った。言いたいことを言っていい相手など、日本には、身の回りにはほとんどいないのだった。てらいなく励ましてくれる人も。Yiをホステルまで送り届けて、次は中国かアメリカか日本で会おう、我々には選択肢が色々だね!と言って別れた。帰る道々、久々に肩の力が抜けたことを彼に心底感謝した。彼もこの異国を楽しんでくれてればいいんだけど。明日は奈良に行くそうだ。鹿におそわれないよう気をつけるように、大仏は必ず見ろと言っておいた。