いい感じの秋の日

ビジネスホテルにしてはよく眠れた。朝からとりあえずスタバでコーヒーを投入して、学会会場で午前の第一セッションを聞く。前から気になっていたトピックだったので勉強になった。10時半ごろ辞去していったん品川駅に行って荷物を預け、新宿へ。サークルの同期N君と待ち合わせてロシア料理を食し、大学での面白ライフの話やら、共通の知り合いの話やらをする。頑張ってるな!やけど羨ましくない的な話など。結局私はこの方向性で突き抜けて出世していくしかないのだろうか。夢の体現とは何であろうか。昨日の懇親会でも話題になったのだが、私は人文学アカデミアを目指す人にとっては夢の体現であるのだそうで、確かにそうだろうなと思うし、私がいつどの瞬間死んでも悔いのないくらいの燃焼度で日々過ごさざるを得ないのもその辺と関わっているとは思うのだが。

N君とは新宿で別れて2時に千駄ヶ谷に。奨学金同期のSさん夫妻と本当に久々の再会。まずは国立能楽堂に行って、能や能楽堂のことについて色々と解説。それから新宿御苑に連れて行ってもらった。これが物凄く綺麗で! エンパイヤステートビルディングに似せたというdocomoのビルのおかげもあって、まるでニューヨークシティにあるセントラルパークのようだった。あれは本当にいいお庭。おもしろいラジコンとかも見られたし、見事な薔薇や菊もあったし。

それからSさん宅にお邪魔した。ご夫妻は2人とも建築家で私と同い年、Nさんは音楽ホールを設計したりN村不動産の億ションとかをデザインしたりされているそうで、奥様のほうはZARA店舗の内装デザインを手掛けておられる(原宿のも京都のも!)。古めのマンションの最上階を買って根本的にリノベーションをされたそうなのだが、そのお宅が本当にもう人類の英知の結晶というか、知恵のかたまりというか、もうきれいだわセンスいいわ使いやすそうだわで、雑誌に載ってたらめちゃくちゃ憧れると思わざるを得ないような、わたし史上ダントツ1位の素敵なご自宅兼事務所だった。本当にすごかった。コスト削減のために図面を引いて材料から注文して作ってもらったというテーブルやらベッドや書棚、バスルームも細かいところまで行き届いており…何ていうのか、細かいところまでデザインを犠牲にせず使いやすくもあり、かつ建物を取り巻く環境を生かすというコンセプトがいきわたり、しかも全然くどさを感じず、照明も使いやすいだろうなーと思う感じなのにセンス抜群、何ていうのか「すごい」感じ。思い返せば、これは英国の某哲学者のプレゼンを米国で聞いて、難しいのにも関わらずあまりにもわかりやすいということに目からうろこがぼろぼろ落ちまくったあの時の感覚とか、バドゥラ=スコダのシューベルト演奏を生で聞いて「これって本当はこんな曲だったの!?」と思ったときの感覚とかに近い。しかもご夫婦の手料理をご馳走になったのだが、これが大変に美味しかった。あらゆる点に関する感覚の鋭さというのを感じさせられる体験だった。

世の中にはすごい人がいるものだ。

辞去して新幹線で京都に帰着。この2日間は、いろんな人のいろんな頑張りを知り、色々綺麗なものも見て、まったく2日間とは思えないような充実度だった。1週間くらい旅してたような気分。