譜めくり気をつけることリスト(2006年10月からのサルベージ)

昨日は久々に譜めくりしました。実は私は就職するまでの約10年間のあいだに、色々なコンサートホールで仕事として譜めくりを行うこと数十回、欧州のアーティストに「譜めくりというのは難しくて、この箇所では良くても別の箇所ではイマイチだったりするんだけど、君の譜めくりはどこもとても上手だった。スバラシイ! proffesionalの仕事だ!」と絶賛されたことがあるくらい譜めくりには熟練とこだわりがありました。というわけで旧日記の人気記事であった「譜めくり気をつけることリスト」を備忘ついでにサルベージしたいと思います。

 

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私が普段気をつけてることを覚書してみます。
 
1.服は黒。夏でも長袖か7分袖。靴は足音の鳴りにくいもの。(生の腕というのは意外と目立つので。黒子になり気配を消す。ひらひらした飾りのある服を着るのはもってのほか。鍵盤にさわると邪魔です。めくるため一歩踏み出すときに足音が鳴らないのは重要。)

2.椅子はピアニストの左斜め後ろ。ピアニストの視界に入らないぎりぎりの近さ。(弾き手になればわかりますが、座ってるとこが視界に入ると気が散るときもある。アンサンブルだと演奏者は大概右を見てるから平気だが、2台ピアノの時など要注意。)

3.めくるとき立つ位置は、できるだけ鍵盤をさえぎらないぎりぎりの所。(腕が長いと譜めくりには有利。演奏者が高音域を継続して弾いているならちょっと演奏者に寄った側に立ってもいいでしょうが、低音域がある場合は注意。後述。)

4.私はだいたい頁の終わりの5小節前に立ちます。(5小節目に立ち、4小節目で手を伸ばし、3小節目で頁を一枚摘み、2小節目は待機し、最後の1小節の最中もしくは最後の1拍くらいでめくる、という感じ。勿論曲によって前後しますが。目安は最後の一段。ただし、テンポの速い曲、遅い曲の場合は臨機応変に。また、最後の段に低音域の部分がある場合は、それの終わったタイミングで手を伸ばすとなお良いと思う。頁の最後の小節まで続いていたら、観念して演奏者を邪魔しないように鍵盤左外側からがんばって手を伸ばそう。)

5.演奏者が止まっているとき(フェルマータなどで沈黙を音楽しているとき)は絶対に立たない、動かない、めくらない。(こういうときに動くことも、譜めくりストが最もやってはならないことのひとつだと私は信じている。曲が動いている間に動くこと。もし沈黙の直後に頁の終わりがあるなら、沈黙する前に立って頁を摘んでおき、演奏者が止まっている間はそのまま静止、曲が動き出したときにめくれば良い。とにかく、沈黙と動きの空気を読むのが大事。どうしようもないと事前にわかっている場合は、演奏者と打ち合わせして決めよう。)

6.摘んだ頁が1枚であることを必ず指で確認、めくる時は音をたてず素早く。(2枚めくるのは最もやってはならないミスのひとつ。頁はすばやくめくって、早く次の楽譜の頭が演奏者に見えるように。ただし、ゆっくりした曲の場合は、急ぎ過ぎないほうが雰囲気に合っている場合もある。音はたてないこと。これはちょっと練習すれば出来る。頁を取っていくタイプの譜めくりの場合(コピー譜など)、楽譜の左端からめくると、頁の頭が早く見えて良い。貼付製本タイプのコピー譜は要注意。頁が一枚かどうかがなかなかわからなかったり、折れてくっついてたりすることがある。)

7.めくった後にチェックすべきことは、その頁内のリピート、1・2カッコ、ダルセーニョ・ダカーポ、終止線、テンポ変化の有無。(これは勿論事前にチェックしておくが、めくるたびに頁内でしなければならない仕事を確認しておくのが重要(もちろん曲を追いながら)。特に頁をわたるリピートに注意。ちなみに、私が以前遭遇したアクシデントは、演奏者のミスで別のコピー譜が頁の間にはさまり、右側の頁がまったく別の楽譜になっていたというもの! なぜかあるはずのないところに終止線があったことで発見できた。演奏者共々冷や汗ものだったが、このリカバリもめくった後のページチェックの賜物。めくり終わってぼんやりするのは超禁物。)

8.ぶっつけ本番でめくるときは、本番前にせめて楽譜を確認しておくこと。リピート、曲の終わり、テンポなどを確認しておく。テンポ確認を怠ると落ちる原因になるので注意。

9.どこを見て曲を追うか―最低音もしくは主旋律。(細かい音符を追うと、落ちるリスクが高まる。私は大体ピアニスト左手の最低音(基音)か、わかりやすい主旋律があればそれで追う。ピアノの両手が延々見分けのつかない伴奏音型の場合、アンサンブルソリストの主旋律を追おう! 音符は小さいが大概単音だからまず落ちない。それでも落ちた(落ちそう)なときは、頁の中で目印になる音型に目星をつけて(和音、特徴的なリズム、転調など)そこに演奏が追いついたタイミングでリカバリすると良い。左頁で落ちてリカバリ失敗したときの非常手段としては、演奏者の視線が右ページ左上に上がる瞬間をチェックするという方法もある(昔某現代曲をめくった時この方法でリカバリした。ただしお勧めしない)。)

10.めくり終わったら速やかに下がる。椅子を鳴らさないように注意して座る。

11.譜めくりストが舞台に引くタイミングは、主催やステマネ、ホールによっても流儀が異なることがあるので、事前に確認。(演奏者の前にさっさと帰って来いと言われることもあれば、演奏者が礼している間は静かに後ろに立っていて、演奏者のあとについて帰って来いと言われることもある。)