留学生活の総括(2009年9月からのサルベージ)

前の日記で人気記事であった、留学直後の総括記事をここらでサルベージしておきたいと思います。初心わするべからず。ちなみに、ふるぶらいと奨学金を得て博士論文研究のために13ヶ月留学し、そののち2013年5月に博士号を取得しました。

 

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留学生活の総括・記録編

以下で、簡単ですが、忘れないうちに留学生活の総括をしておきたいと思います。

 

 

留学生活の総括・良かったこと

【研究(専門)】

  • この分野では世界で一番有名な研究所で勉強したこと。所有する史料の数と範囲が世界一だった。
  • 指導教官が、日本の指導教官とぜんぜん違うタイプの研究者だったこと(しかもどちらもとてもいい人であること)
  • いっぱい調査に行けたこと。おかげで博士論文への見通しが見えてきた。
  • 新しい研究テーマの模索をスタートできたこと。

 

【研究(一般)】

  • 海外の大学院を知ったこと。日本にはない、いいところが色々ありました。
  • 女性のキャリアの積み方について開眼したこと。これは、女性の研究者ロールモデルがほとんど存在しないといっていい日本では、決して得られない成果だったと思う。
  • 自信を持ってもいいし、楽天的になってもいいと学んだこと。

 

【アメリカ生活・その他】

  • 奨学金のおかげで世界中に友達ができたこと。研究や仕事だけじゃなく、社会のために何ができるか等を考えるようになった。ラテンアメリカや中東などについて、自分がほとんど何も知らなかったことを思い知った。あらゆる意味で視野が広がったと思う。
  • 英語に慣れたこと。とくに会話に慣れた。日本人の知り合いがほとんどいなかったのと、日本に数えるほどしか電話をかけなかったので(家族にはとうとうかけなかった・爆)ぜんぜん日本語をしゃべる機会がなかったため。11月12月ごろはひと月に1時間も日本語話してなかったと思う。
  • アメリカ人の友達がたくさんできて、アメリカの家庭がどういうものか知ることができたこと。
  • 食料品が安くて、いろんな料理に挑戦できたこと。
  • アメリカのキリスト教について学んだこと。
  • 研究のほかにもいろんな都市に旅行に行けたこと。

留学生活の総括・反省点

  • やはり留学前には非常に具体的な研究計画をたてるべき。私はかなり具体的な計画をたてたつもりだったけど、それでもかなりあぶなっかしかった。
  • 研究計画はやっぱり「計画」であって、なかなか計画通りにはいかない。
  •  学位や論文といった目に見える成果を持って帰っていないこと。これからなんとかするけどね!
  • 英語でのアカデミックライティングをほとんどやらなかったこと
  • プレゼンテーションも同じく。数回程度か。
  • 授業などに出る機会が少なかったこと。

それでも、「調査する」 「人脈を作る」 「英語に慣れる」の三大目標は達成できたかと思います。

留学生活の総括・今後留学を目指す人のために

留学をするなら、ということで、私からできるアドバイスは以下の通りです。

  • きちんとした達成目標をつくるべき。できるだけ具体的な計画と目標(しかも留学期間内で達成可能と思われるもの)をつくるべき。生活や環境の劇的な変化の中を、そして限られた時間の中を泳ぎきるには、具体的な計画・目標無しでは無理。
  • ふるぶらいとでもろーたりーでも大学の提供する交換プログラムでもいいから、できるだけ奨学金やプログラムに参加して留学すると非常に良いと思う。多彩な人間関係をつくるきっかけになるし、それがおいおい留学生活そのものや研究を支えることになる。
  • 卒業してからどうするかを(結論は出ずとも)考えておくこと。いろんな人にしょっちゅう聞かれるし、自分でも考えておくのは大事なこと。
  • 社交的になること。笑顔を出して、積極的に話しかけるのは、人間関係を作るためにとても大事なこと。友達ができれば英語も上達する。できるだけいろんな会合に顔を出そう。声をかけられたら絶対出る!くらいの気持ちで十分。メアド交換したらその日のうちに送ると良い。飲み会でもなんでも自分で企画すれば皆乗ってくれる。 
  • 話しかけるには話題が必要。普段からいろんな分野にアンテナをはっとくと良いし、自分の知らない世界を知っている人には積極的に教えを請うて、物おじせずにそこに飛び込んでいけばいいと思う。どんなことにも常にビギナーはいるんだから遠慮は不要。
  • とくに自国の文化や歴史や社会についてはちゃんと知識を持っておくと良い。よく聞かれるし、答えられないというのは思いのほか恥ずかしい。意外としょっちゅう聞かれてときどき困ったのが、日本の主要都市の人口。調べておくといいかも?
  • 世界の歴史と政治と宗教の状況も頭に入れておくべき。そうすれば不適切な発言をしないで済むし、会話もはずむし、お互いを尊重できる。とくにアメリカには色々な国や文化出身の人がいるので、そういう気遣いは重要。
  • アメリカは食事がまずいというが、料理ができる人にとっては天国。料理しよう。
  • 音楽とダンスは国境を越える。間違いない。
  • 英語は出来るに越したことはない。まず語彙。それから発音。ネイティブスピーカーのの友達の発音や言葉の選び方に常に注意を傾けて、表現の方法を学べばよい。

他にも色々あるだろうけど、とりあえず今思いつくのは以上です。

留学生活の総括(追記)・よく聞かれた質問一覧

以下、よく尋ねられた質問一覧です。私がどう答えたかはプライベートなことも含むので割愛しますが、留学後の会話の参考になればと思います。

  • どうして留学しようと思ったの? 目的は?
  • なんでわざわざミネソタに来たの?
  • 日本では何年英語習った?
  • 専門分野は、どういう理由で選んだの?
  • 卒業後はどんな職を探すつもり?
  • 今後アメリカで働くつもりはあるの?
  • アメリカに来てみて、ここまでどんな感じ?
  • アメリカで、一番「変!」って思ったのって、何?
  • 日本ではどの辺出身?
  • 出身地はやっぱり東京とは違うの?
  • 東京の(あるいは出身地の)人口ってどれくらい?
  • 日本って寒い?(暑い?)雪降る?
  • 日本ではどれくらいの頻度で地震来るの?
  • 地震体験したことってある?
  • 富士山って日本のどの辺(東京からみてどの辺)にあるの?
  • 日本では、ふだんどんな食事をしてるの? どういう味付けするの?
  • お寿司って作る?
  • パンとかシリアルとかって人気あるの?
  • 日本とアメリカのファッションの差って?
  • 日本では床に座るって本当? 正座するの? あぐらはかかないの? 足痛くないの? 中国・韓国ではどうしてるの?
  • 日本のいまの主要産業って?
  • 日本の景気と失業率っていまどんな感じ?
  • アメリカと比べて日本の物価ってどれくらい?
  • 日本での平均初婚年齢って何歳?
  • 日本の専業主婦率っていくつ?
  • 祖父母世代とは一緒に住んでる? 老後の世話とかはどうしてる?
  • アメリカでは家族でハグしたり"I love you."って言ったりするけど、日本の親はどういうふうに愛情表現するの?
  • 「出る杭は打たれる」ってほんと?
  • 日本語にも訛りってあるの? 何か例を挙げられる?
  • 日本語の文字システムっていったいどうなってるの?
  • 日本語と中国語・韓国語の関係って?
  • どうして中国人・韓国人留学生と比べて、日本人留学生が少ないんだと思う?
  • 日本から中国・韓国に行くには何時間かかる?
  • いまの日中関係・日韓関係についてどう思う?
  • 今の日本人は、どういうときに着物着るの?
  • 着物はどうやって着るの? 着物着たことある?
  • 日本でメジャーな宗教って何?
  • 神道って(日本の仏教って)簡単に言ったらどんな宗教?
  • 日本ではクリスマスって祝う?
  • 日本で一番大規模な祝日っていつ? どんな祝日?
  • 天皇って何者? どんな人? 自分ではどう思う?
  • 小さい頃どんなアニメ見てた?
  • マンガ好き?

ほかにも色々あったはずですが、いまぱっと思いつくのはこれくらいです。ご参考までに。

奨学金に感謝

ふるぶらいと奨学金に心から感謝しています。この奨学金がなかったら、私はそもそも資金面からアメリカに行けなかっただろうし、アメリカ各地で行った調査があのようにスムーズに進むこともなかったと思います。ふるぶらいと奨学生というのは思った以上にアメリカでは尊敬されていて、皆私の研究や留学生活を応援してくれました。しかも、オリエンテーションやセミナーで、他国からの奨学生と仲良くなる機会を与えてくれました。そのおかげで、世界各国の文化や政治や経済の状況を知るきっかけも得ました。これは、資金を与えてくれたことに勝る、お金で買えない財産だと思います。奨学金が与えてくれた機会にこたえるためにも、今後の人生で、アメリカと日本だけでなく他のいろんな国のためにもできるだけのことをやれれば、と思っています。奨学金のおかげで得られた友人たちとの人間関係を大事にして、そこから得られる色々なものをこれからの仕事にも生かしていければと思います。

この奨学金に応募するとき、既に奨学生だった研究室の先輩は「これは成績とかっていうより、人格を見て採用決めるからなぁ…」とおっしゃってたのですが、今になって「なるほど、その通りかも」と思うようになりました。この奨学金のミソはお金には無いです。これからこの奨学金に応募してみようと思われる方がいたら、まずは「自分の志は何だろう」と考えるところから始めると良いかも、と思います。