今日は曇り

朝から延々授業準備と研究。料理の作り置きもせねばならない。今日は出かけたくないな。

さて、先日「アナと雪の女王」を観賞したのだが(ネタバレ注意)

見て一週間くらいしてくると、職業病が頭をもたげて、色々深読みしたくなってきた。そもそもあの話で一番苦労したのは、王女2人を支える官僚だか大臣だか摂政だかではないのか。画面にほとんど出てこないけど。おそらくアレンデールは王族がいなくても基本的に困らないような、非常にできた政治機構を持った国だったはずである。だから王様夫妻が亡くなっても、どうにか持ち堪えてた。で、ようやく新女王戴冠式となったときに事件が起こり、各国大使の前で新女王が戦略兵器級の存在であることが発覚(「モンスター」どころの話じゃない)。官僚たちはたまげたはず。たぶん官僚たちは知らなかったでしょう。知ってたら戴冠式の段取りをもっと工夫したんでないかと。しかも、この最終兵器女王は気候を操れるだけでなく、雪や氷に命と意志を与えて、必要ならば戦わせることができることも各国大使の前で証明。あろうことか頭上に雪雲を与えて夏の国に送りこむことすらできる。無限に戦力供給できる。これは明らかに世界の軍事バランス崩れます。

この記事に(http://d.hatena.ne.jp/ohnosakiko/20140413/p1)「よく出来たハッピーエンドだとは思う。でも、広場をスケートリンクにしたり噴水を凍らせてみせたって、あの岩山にそびえ立つ壮麗な氷の城という"芸術"に比べたら、本人にとってはチャチな手品みたいなもんじゃないですか。」というご意見があって、ジェンダー的側面から、能力の象徴として考えると確かに「なるほどな」と思っていたんですけど、ふと真面目に軍事力のことを考えると、最後に出てくるのが「チャチな手品」になるのは当然で……あれは要するに平和アピール、アレンデールが軍事大国でないことのプロパガンダなんですよ。IAEAの視察に備えて「原子力はあるけど核兵器作ってないです」ってアピールしてるようなもん。私が大臣や官僚なら女王にお願いします。フレンドリーに人々と交わって、その能力を楽しく平和利用してるところを国民や各国大使、皆の前でお見せください、と。そうでなきゃアレンデールは軍事力増強を懸念され、ややもすると各国連合と対立し、攻め込まれても不思議でない(たぶん女王は撃退するでしょうけど、国民は消耗するし、貿易できなくなる)。あのラストは、はからずも超軍事大国となってしまったアレンデールの国際イメージ戦略の一環ととらえるべきなんです多分。エルサ女王時代のアレンデール外交戦略は、前途多難に始まったっていうことです。南沙王国をはじめとした、女王を陥れようとした各国との外交摩擦も今後気になるところ。ラストシーンで「貿易しない」(=経済制裁)という台詞が出てたけど、経済制裁と国交謝絶で済むんやろか、あれ。王女姉妹の結婚も、政治上色々問題になるだろうし、何よりエルサ女王からさらに代替わりする時、国際社会のバランスがどうなるのかが本当に怖い。アレンデールの外務省官僚たちは胃に穴あいてるんちゃうやろか、と思いましたです、はい。

しかし、こんなこと考えながらディズニー映画見るかって話ですよね。それにこの解釈だと最終的に女王は"be a good girl"のくびきから逃れられないじゃないか、ともちょっと思ったけど、でも女王は軍事力を備えた最高権力者で、大好きな妹とも無事に和解したわけだし、能力は戦略的にconcealすればいいだけで押し殺す必要はとくにない(それに本人はそんな暴力的な使い方したくないと思ってる)し、家族と周囲の理解もあるし、やっぱり単なる"be a good girl"エンドではないんだと思います。